弁膜症患者の日記

僧帽弁閉鎖不全症(前尖の逸脱症) を治療する過程

ドクターと病院のリサーチ

手術を依頼するドクターと病院を選ばなくてはならない。

自分の場合は弁形成が可能なので、弁形成術が上手な先生を見つけたい。

弁形成術は医者の腕次第では再手術を回避できる可能性を上げられるので慎重に選びたい。

 

判断材料1:手術実績数

ブログや本を読むと、執刀医の手術の実績数が重要だと言う意見をよくみる。それも助手としての実績ではなく、執刀医としての実績数が重要。

心臓外科手術の名医と呼ばれているようなドクターは、たいていホームページなどで実績を積極的に公開している。

逆に公開しない医者は実績数などに不安があるなどのネガティブな面が考えられるので、実績を公開しているかどうかは最初のスクリーニングとして有効なのではないかと思う。もちろん、すべての名医が積極的に公開するとは限らないので、そこの取りこぼしには注意が必要。

ちなみに、ドクターごとの死亡率については参考程度にとどめたほうがよいらしい。理由は、名医ほど難易度の高い患者を引き受けることがあるからとのこと。納得。また、緊急手術とそうでない手術は別ものとして見るべきとのこと。

 

自分が調べた限り、次のようなドクターの実績が見つかった。

 

南淵明宏

http://www.nabuchi.com/result/

これまでの心臓外科手術執刀数(1993~2015年)

心臓弁手術
(大動脈弁置換術、僧房弁置換術など)
1370例

 

樋上哲哉

https://www.kobetokushukai.org/about/director_introduction/

術後10年以内の再手術率:2%未満

(略)

術後の僧帽弁逆流の完全制御(逆流ゼロ)を95%以上で達成 

 

 

磯村正

https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kekkan/staff/1868.html

これまでの7000症例以上の手術経験

 

小宮達彦

https://www.kchnet.or.jp/hdc/surgery/about/director.html

2011年の弁膜症手術数は143例でした。可能な限り自己弁を温存した術式を選択する様にしています。僧帽弁形成術はこの5年間に276例施行しました。変性疾患では、弁形成術成功率は99%です。また大動脈弁形成術を行う病院は日本ではまだ少ないですが、当院では積極的に取り組んでいます。2000年以降に227例の大動脈弁閉鎖不全症に対する手術中、82例(36%)の症例で自己弁温存術式を行ないました。

(略)

弁膜症手術の手術成績は良好で、単独弁膜症手術過去5年間420例の手術死亡率は1.9%です。

 

 

天野篤

https://medical.jiji.com/doctor/1825

これまでに天野医師がこなした心臓手術は約7,500例となる。それほどの数をこなしながらも死亡率の高い緊急手術も含めて98%という高い成功率

(略)

2012年2月に行われた今上天皇の冠動脈バイパス手術では、その信頼感の高さから東京大学医学部との合同チームの一員として参加要請され、見事に大役を果たした

 

 

渡邊剛

https://newheart.jp/achievement/

手術死亡数(術後院内30日以内 ※緊急手術を除く)

手術死亡数 4例 ÷ 手術総数 1343例 = 0.3%

弁膜症だけの手術死亡率を独自に計算すると、2÷949=0.210748155% とかなり低い死亡率だった。

 

https://drwatanabe.exblog.jp/

チームワタナベでは主に僧帽弁形成術(daVinci MVP)、心房中隔欠損症や冠動脈バイパス手術に用い2018年11月末までにダ・ヴィンチの手術は自験例565例あまりを経験しています。うちdaVinci MVPは296例です。

メールでダヴィンチでの僧帽弁閉鎖不全症の実績をご本人に伺った結果(転載許可をもらっていないため、具体的数値は伏せます):

僧帽弁閉鎖不全症にたいする弁形成術手術件数は今年2019年の11月末の状況で、XXX 例です。内ダヴィンチ手術XXX例余りでした。ダビンチ手術の執刀医は全て私です。

(略)

ダヴィンチの手術死亡ありません。

 

 

高梨秀一郎

http://longonlay.com/operation.html

今の病院のドクターには、弁形成術で一番有名どころの先生はこの方です、と教えていただいた。

 

 

判断材料2:病院や手術チームの実績

ある心臓手術の本によれば、心臓外科手術の場合はチームワークが非常に重要で、執刀医だけでなく手術チームの体制も結果に影響を与えるらしい。手術時間や単純ミスなどに影響しそうだということは素人でもわかる。

本によれば麻酔医との連携が特に重要で、執刀医が麻酔医を自由に選べるかは連携性を計る上で重要な質問になるとのこと。

大学病院だとチーム構成に多少不自由があるとのことだが、この情報も最新の事情はわからない。

 

こういった観点も含めると、例え日本一の名医だとしても、どの病院で手術を受けるかも多少考慮した方がよいと思う。例えば病院を移動した直後なんかはチーム体制が未熟でパフォーマンスに多少影響があるのではないかと思う。

 

そこで、個人的には、以下のような病院ごとの手術実績数も参考にし、弁膜症や心臓手術の数が極端に少ない場合は見送るつもり。

https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/medical/ranking-mi/01.html?lpk=

 

 

手術チームという観点でみると、ニューハート・ワタナベ国際病院が良さそうに見える。この病院は心臓手術の名医である渡邊先生が作った組織なので、少なくとも執刀医である渡邉先生とその手術チームとの相性はかなり期待できるのではないかと思う。

 

 

判断材料3:再手術率

弁形成術は成功しても、数年後に逆流が再発し再手術が必要となると、その場合はほぼ弁置換になるし、その場合の手術リスクもグンと上がる。

なので、再手術率がどういった具合なのかを聞くのは重要な質問だと思う。

 

この観点で気になっているキーワードが「術中心拍動下逆流評価法」。

僧帽弁疾患の治療においても画期的な開発をしている。それは術中心拍動下逆流評価法というもので、弁形成術の術中に大動脈を遮断しながら心臓を動かして、逆流がないかどうかを確かめることができるというもの。この方法ではその場で弁の状態を確認できるため、術中に微調整ができる。そのおかげでほとんどの例で残存逆流ゼロの完成度の高い僧帽弁形成術を実現している。

https://medical.jiji.com/doctor/1905

この技術による成果なのか、樋上先生は「術後10年以内の再手術率:2%未満」という実績を公表されている。

他のドクターで再手術率を公表する例は見当たらないので比較できないが、この数値はとても重要な指標ではないかと思う。

しかし疑問なのは、10年後に再手術したかという情報をどのように正確に収集しているのかということ。患者によっては引っ越しなどして他の病院で再手術という例もありそうなものだが、その場合は再手術していない患者としてカウントされてしまう。

 

 

また、新しい技術や医療に対する再手術率のデータは不十分なので、正確な再手術率を知ることができないかもしれない。例えば自分の場合は、ダヴィンチを使ったロボット支援下の弁形成術に興味があるが、この方式での弁形成を受けた患者の再手術率はまだそれほどデータがないはずだ。ある程度の経験を積めば、ダヴィンチを使った方が再手術率が下がるなどの傾向があるならそれも参考にできるが、この辺りは直接聞いてみたい。

 

ただ、以下のブログの情報によれば、10年以内の再手術率といわずとも、数年レベルのデータで十分なのかもしれない。

弁形成術で再手術になる場合は、術後すぐに不具合が現れ始めて早期に状態が悪くなってくるらしい。術後数年経ってから、急に再手術というケースはあまりないそうだ。

 

判断材料4:病院の信頼性

ある本によれば大学病院か私立病院かによって、病院内の政治事情も大きく異なるとのことだった。結論だけ言うと、大学病院はオススメしないと書かれていた。理由としては医局という仕組みの問題点や経済合理性が働きにくい環境などが挙げられていた。

しかし、その本が書かれてから20年近く経過しているので、状況もかなり変わっていると思う。

参考:https://president.jp/articles/-/18162?page=2

循環器内科医は、外科手術が必要だと判断して心臓外科医に手術を依頼するわけですが、外科手術が終わって紹介した患者が亡くなってしまったり状態が悪くなって帰ってきたりすれば、その外科医には患者さんを紹介しなくなります。医師は誰しも患者さんに元気になってほしいので、同じ病院内でさえ、心臓外科医の腕が悪いと、その心臓血管外科には患者さんを紹介しなくなるくらいシビアな世界です。逆に、結果がよければ、循環器内科医は、他院の心臓外科医であってもどんどん患者を紹介するようになります。

(略)

最近は循環器内科医がカテーテル狭心症心筋梗塞の治療を行うだけでなく、弁膜症の治療まで行うようになったことから、治療実績や評判の高い施設、医師を以前にも増して意識しているようです。自分たちの手に負えないか、患者さんがそのような施設を希望されれば、ごく自然に任せられる施設への紹介を行っているように思います。

 

判断材料5:手術に伴う苦痛

MICSやダヴィンチを使えば傷口が少なく退院までの回復が早い。また傷口が小さいことによって一部の合併症のリスクも低減できるらしい。

個人的には、傷の痛みは耐えられる自信があるが、術後の息苦しさと吐き気などの内科的苦痛が一番心配。

手術時間や心肺停止時間が短ければ麻酔やその他の薬の影響も少なく患者の負担も軽くなると考えれば、手術の腕や術式は手術後の苦痛の度合いと関係があるかもしれない。

参考:https://satoppe824.exblog.jp/17630245/

上記のブログのようなダヴィンチ手術の体験談はまだかなり少なく、患者の実際の体感がどうなのかがほとんど見えない。

仮にダヴィンチを使えばそれらの苦痛が多少なり軽減されるとしても、そのような短期的なメリットを重視するあまり、長期的なリスク(例えば不完全な形成による逆流再発)を上げてしまうのであれば、短期的な苦痛には目をつむりたい。

 

 

判断材料6:ダヴィンチ手術か開胸手術か

MICSで手術痕を小さくする代わりに整形術の正確性を下げるデメリットがあるという話は理解しやく、この選択なら自分は迷わず開胸手術を選択する。男性なので手術痕は気にしないので、確実性をとりたい。

しかしダヴィンチによるロボット支援下手術は、そういう天秤のかけ方は正確ではないのかもしれない。

十分に熟達した技術があれば、通常の開胸手術よりも正確性を向上させることができるものなのかもしれない。少なくともこのダヴィンチ手術を押しているニューハート・ワタナベ国際病院のサイトにはそう読める文章がある。

僧帽弁形成術を行なうに当たって、ダビンチ手術は最も理想的な手術といえます。
僧帽弁は深く切り立った崖のようなところに位置しているので、胸骨正中切開で正面からアプローチしても、その閉鎖不全状態を観察するのはなかなか難しいのですが、ダビンチ手術なら右横からのアプローチなので、その観察が容易です。
3次元のモニター画像を見ながらミリ単位の操作ができるので、正確に弁を形成することが可能です。術後の弁機能はとてもよく保たれます。
ただし、医師に高度の技術力・経験が求められます。

https://newheart.jp/operation/ope-01-01.html

 

 

否定的意見もある。

https://drwatanabe.exblog.jp/22805331/

これに対する反論も聞いてみたい。

 

結論

どのドクターに手術依頼するかはまだ決めていない。術後10年以内の再手術率を聞いてみないことには判断できない。セカンドオピニオンでは術後10年以内の再手術率を中心に伺って判断したい。